余白
キミはライブを聞いてはいないのだが、とりあえず誉めておこう。
キミはそう考えて、イケていたと伝える。

ロバート 「だろ♪イケてたよな!」

そう言うとギター男は突然飛びついてきた。癖なのだろうか。
キミは抱きつかれる寸前でなんとか身体をひねってそれを避ける。
ギター男の身体は空を切り、そのまま床に倒れこむ。

麻菜 「そんなところで寝ていたら風邪をひきますよ?」

ちょっとその心配はズレていると思う。

ロバート 「ところで、どの曲が一番イケてた?」

ギター男の質問に、キミは言葉が詰まる。
何しろ、実際はライブが終わってから広場に来たのだ。
キミが考えこんでいると、ギター男は言葉を続けた。

ロバート 「あー、そんなに深く考え込まなくてもいいぜ。
 音楽ってのは「音」を「楽しむ」って書くんだ。
 曲がわからなくても、楽しんでもらえればイイぜ♪」

ギター男に嘘をついてしまったことを申し訳なく思いつつ、
キミは広場をあとにした。
できることならまた今度聞きに来たいものだ。




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